僕達の願い 第15話


そうだろう、C.C.?

ルルーシュが何気なく口にした言葉に、傍にいた二人は息を呑み、足を止めた。
C.C.。
ゼロレクイエムの協力者、永遠を生きる魔女。
ルルーシュの頼みで、藤堂と四聖剣が探しまわったが結局見つけられなかった人物。

「そこにいるんだろう。今まで何処にいたんだ?探したんだぞ」

木々のざわめきだけが辺りに響き、スザクとナナリーは辺りを見回した。
そしてしばらく後、ようやく諦めたのか木陰から長い新緑の髪の着物姿の女性が姿を現した。それは間違いなくルルーシュの共犯者C.C.だった。

「私のことを誰かから聞いて知っているのか?それともお前は私の・・・」
「どうしたんだ?今日は随分と察しが悪いな。お前の共犯者に決まっているだろう。久しぶりだな魔女。今まで何をしていたんだ」

言葉を遮るようにルルーシュが答えると、C.C.その顔に笑みを浮かべた。

「ああ、久しぶりだ。やっとブリタニアから・・・いやV.V.から逃げ出し日本に来たが、お前達が枢木の家にいなくて焦ったぞ」

お前の気配を頼りにここまで来たから大変だったんだ。と苦笑しながらルルーシュの前まで来ると、その前でしゃがみ、ルルーシュの傷ついた小さな手を取った。眉をしかめながら、ルルーシュの手や頬の傷を確かめる様子から、彼女は今までルルーシュの様態を知らなかったことが分る。

「気配ということは、やはりあるのか」
「ああ、お前にはギアスがある」
「そうか。お前、後をつけられてはいないだろうな」
「そんなヘマすると思うか?」

若干ふてくされながら言うC.C.に、ルルーシュは口角を上げ、不敵に笑った。

「いや?で、どうしたい?また俺と契約をするか?」
「お前と?一体どんな契約をすると言うんだ。大体前だってお前契約不履行だろう」

こんな体のルルーシュと結べる契約など無い。
契約があっての共犯者。
何も契約ができない以上、二人は共犯者にはなれない。
だから共に居ることはもう出来ないとでも言うように、C.C.は悲しげに笑った。

「そうだな。俺はお前との契約を果たすこと無く、あの選択をした。だが今ならまた別の選択を選べる。俺は後悔していたんだよ、お前のことだけはな。だから、こうして再び出会えたのだから、お前の願いを叶えたいと思う」
「・・・その体でか?」

C.C.の願い。それは他人にこの不老不死という呪いを移す事。
ルルーシュがこの呪いを受け取れば、この不自由な体のまま永遠を生きることとなる。
いくら死を望むC.C.でも、そんなことは出来ないと口にした。

「流石に今すぐは無理だな。少し時間をくれ」
「動けるようになるまでということか・・・だが・・・これは、この傷はV.V.がやったのか」

触ったことで気づいたのだろう。ルルーシュが腕を、指を動かさないことに。
C.C.は痛ましげにその眉を寄せた。

「おそらくはV.V.だろうな。C.C.、必ず俺は元通り動ける体になる。なってみせる。その時が来たら、あの時の約束を果たそう」
「だがルルーシュ」
「まって、契約って何?変な内容なら許さないよ?」

二人きりの世界に入り込んだルルーシュとC.C.の様子に、イライラとしながら、それでも我慢していたスザクは、もう限界だと口を挟んだ。
そうだスザクとナナリーがいたんだ、此処でする話ではなと気が付き二人共口を閉ざした。

「二人揃って口を閉ざさないでよ。教えて、ねえルルーシュ!」
「これは俺とC.C.の問題だ。気にするな」
「そうだな、お前には関係のない話だ。口を出すな枢木スザク」

相変わらず息の合ったこの二人に、イライラは更に募る。
C.Cはルルーシュが唯一絶対の信頼を置く相手だ。
ジェレミアも信頼してはいるが、マリアンヌを守れなかった贖罪のためその、息子である自分に仕えているのだとルルーシュは言った。ジェレミアが聞けば否定するような内容だが、ルルーシュは無償の忠誠は信用しない。
何より裏切られ続けた人生を送った彼は、自分に忠誠を誓う者を信用しきれない。
C.C.は契約を交わした共犯者。
そして唯一最初から最後までルルーシュを裏切らなかった人物。
スザクが失った物を持っている存在。
この苛立ちは嫉妬だとスザクは理解していた。
今何よりも欲しているものを当たり前のように手にしている者だから、本当なら再会して 欲しくはなかった。だからルルーシュに願いとはいえ、この1ヶ月探して見つからなかったことに安堵しても居た。
彼を手放したのは自分だというのに、相変わらず自分勝手な思考だと思う。
それでも、彼の隣は渡したくない。
自分は剣で彼女は盾。
あの時は共に彼の隣にあった。
だが剣と盾、今度はどちらも自分でありたい。
なんて我儘なのだろう。
ゼロとして生きていた時は、欲しいものなど何もなかったのに。
個人的な願いも、夢も希望も未来も何も無かった。
生きる理由は彼の残した生きろというギアスと、世界を頼むという最後の願いに応えたかっただけ。
今はあの頃のように、自身の欲を消すことは出来そうにない。
寧ろあの頃抑えていた分、歯止めが聞かなくなっている気もする。
既に会話を終え、散歩を再会した道のりでも、当然のように彼の横を歩くC.C.を睨みつけてしまい、C.C.もまた不愉快そうに此方を睨みつけてきた。
あちらから見れば裏切り続けた友人で、ルルーシュの作戦ではあるが、彼を殺し英雄の名を奪ったのだから、嫌われていて当然だった。
C.C.とろくに面識のないナナリーはもしかして自分たちにとって敵なのではないかと不安そうな視線を向けてきて居ることに気づいたのは、C.C.が視線でナナリーを見ろと告げたから。
僕は慌ててナナリーに彼女は大丈夫だよと笑顔を向けた。
目が見えなくなったことで、人の気配に敏感になったルルーシュは、スザクとC.C.、そしてナナリーの情況に気づいていながらも口にはしなかった。

「C.C.、かなり面白い状況になっている。V.V.は記憶を持っていると予想されるが、此方側はここに居る4人意外にも集まっているぞ?」
「スザクはわかったが、ナナリーも覚えているのか?他に誰が来ている」
「桐原、カグヤ、ラクシャータとそのチーム。藤堂と四聖剣だ」
「ほう?ラクシャータが居るのか。ならばお前のギアスはどうにか出来るな」

コンタクトレンズが完成すれば、ルルーシュはギアスを破る事ができる。
それは両眼が見えるようになるということ。

「そちらは任せる」
「ああ。だがこうなると他にも居るかもしれない。私は様子を見て回ろう。ブリタニア側に記憶持ちが居るのは怖いが、私としては日本に居る愚か者たちのほうが気になる」
「愚か者たち?」
「扇たちだ」
「覚えていたところで何かできるとも思えないが」

副司令という地位には全く見合わない男だった。
しかもこの時代に自分たちが何処に居るかも知らないはず。
声高に未来の話をしたところで白い目で見られるのがオチだ。
だから記憶を持っていたところで痛くも痒くもないというのがルルーシュの考えだった。
だが、C.C.とスザク、ナナリーはルルーシュが死んだ後の扇を見ている。
だから扇が安全だと言い切ることはできなかった。

「敵の宰相の言葉を鵜呑みにし、敵軍の、しかも純血派に所属していた女の言葉にも惑わされる男だぞ。知っていたか?ブラックリベリオンで扇を撃ったのはヴィレッタだ。そのヴィレッタをいつの間にか斑鳩に連れ込み、子供まで仕込んでいたんだぞ?裏切り者の分際で日本の首相にまでなった厚顔無恥な男だ。何をしでかすか解らないから、私からすれば要注意人物だ」

再会させたのはルルーシュだが、あれはあくまでもヴィレッタに日本人と関係があったという過去を知られれば地位を無くすぞ、という脅しであって、まさか寄りを戻すとは思っていなかった。
ゼロを裏切り、暗殺に失敗した事で死を偽装し、その証拠を消すためと言わんばかりにギアスを否定し、世界を救うという大義名分を掲げ、執拗にルルーシュへ攻撃を仕掛けたことで、自分たちはもう正義を名乗れないと藤堂や玉城達が黒の騎士団を抜けた話は聞いていたが、扇は再び姿を現したゼロの横に、副司令という座にそのまま居座ろうとした。
だが合衆国日本の初代首相にという話が来たら即飛びつき、黒の騎士団をあっさりと捨てたという。

「僕もC.C.の意見には賛成かな。扇は何をするか分からないっていうのは同意見だ。日本人の求心力を得るために悪逆皇帝を一番利用したのは扇だからね。本当のゼロが君で、君の計画全てを理解した一人なのに、自分の地位を守るためならと、僕達が用意していない君の罪も偽造し始めたからね」

最初は上手くいっていたが、扇の治世は行き当たりばったりで、段々粗が見え始めると求心力も落ちていった。
そのことに焦った扇は、悪逆皇帝の名を勝手に利用し始めたのだ。
なにせ黒の騎士団の副司令だった男だ。
世に知られていない悪逆皇帝の悪事を知っていてもおかしくはないと、日本がなかなか復興しないのは、悪逆皇帝の残した負の遺産のせいだと人々は納得した。

「だから私は、ラクシャータにお前のコンタクトレンズの制作を頼んだ後扇を探る。ギアスは自力でどうにかしてくれ。記憶と違い、私ではその封印は破れないからな。枢木スザク、不本意だがルルーシュはお前に任せる。私の信頼を裏切るなよ?私はルルーシュと違い、一度裏切られれば二度と信用はしないからな」

私をルルーシュの盾と言ったのはお前だ。
だから私は盾として全ての害悪からこの子を守ろう。
私が笑って死ぬためには、この子が幸せでなければならないのだから。
それが私の願い。

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